ヨーロッパからの新たなるムーブメント
「そこにマーケットがある」という確固たる実績が得られないと、なかなか行動を起こさない日本のメーカー。一方で、様々な色仕掛けを繰り出して自ら新たな需要を開拓しようと頑張るのが、とくに「プレミアム」をキーワードに謳う多くのヨーロッパブランドのスタンスだ。
もちろんこれはあくまで一般論。日本のメーカーからも世界の市場に向けたチャレンジを感じさせるモデルがリリースされた過去は少なからず思い当たるし、ヨーロッパメーカーから世に問われたフロンティアスピリットに溢れるニューモデルが、ただの一代限りで見事に玉砕という例もひとつやふたつではない。ただし、そうした積極果敢なイメージこそが、実はヨーロッパ車の魅力だと感じる人は少なくないだろう。
そんなヨーロッパからリリースされるニューモデルに、昨今また新たなるムーブメントが感じられる。これまで幅をきかせてきたフルサイズ級のモデルに対し、ひとつ下のクラスを受け持つ多くのSUVのデビューがそれだ。エンジンは4ないし6気筒で、排気量も上限がせいぜい3.5L程度まで。それが昨今、コンパクトSUVと称されるニューモデルたちに共通して搭載される心臓の特徴的ディメンジョンになる。
もっとも、ここでのコンパクトという形容はあくまでも従来のフルサイズSUVに対する相対的なもの。個人的には、全幅が1.8mを大きくオーバーするモデルに、こうした表現を用いるのは少なからず抵抗感をともなう。
「コンパクト」でも情感たっぷりのフォルム
いずれにしても、今回の企画で主役となるXC60のサイズも、まさにそうしたポジションに収まる印象が強いもの。全長は兄貴分であるXC90比で185mm、ホイールベースは80mmと大幅な短縮。ただし、全幅はわずかに20mmダウンの1890mmに留まるから、やはり日本の環境からすれば、かなり大柄と言わざるをえないのがこのモデルの基本プロポーションでもある。
一方で、「ゆとりの全幅の持ち主であるからこそ、あの情感豊かな表現が可能になった」と、そう納得させられるのがXC60のスタイリングでもある。キャビン後端にかけての強い平面絞りや、それとリンクして実現したステップ状のショルダー処理などはその典型と受け取れる部分。
それを筆頭に、抑揚溢れる各部の造形がXC60のエクステリアの見せどころだ。そして、フロントグリルに収められたかつてなく大きな「アイアンマーク」やフロントバンパーからフードを経由してサイドへと回り込むV字型のライン、さらにはV70/XC70から採用されているブランド名が強調表示されたリアのロゴタイプなど、自らのDNAを強くアピールする姿勢が垣間見られるのも、このモデルのデザインのひとつの特徴と言える。