美点をしっかりと継承したXCのエクステリアデザイン
プレミアムクロスオーバーSUVの源流は、1998年に登場したレクサス「RX」だ。高級セダンの快適性を備えたSUVというこれまでにないコンセプトが市場で高く評価された。さらに2014年にはRXの弟分となる「NX」が登場。現在はこの2車種が、レクサスの販売台数を牽引する重要な存在となっている。
その人気ぶりを見て、他のプレミアムブランドからも同様のモデルが続々と登場した。このカテゴリーにはメルセデス・ベンツ、BMW、アウディといったジャーマンスリーとともに、スウェーデンのボルボもこの早いタイミングで参入。フラッグシップのXC90は2002年に、弟分のXC60は2008年に登場。中でもXC60は累計販売台数がボルボモデルの中でトップとなるエース的存在だ。
実は私は、以前からレクサスの本命ライバルはジャーマンスリーではなくてボルボだと感じていた。その理由をいくつか挙げると「威張らないプレミアム」「上品な味付けだが奥深い走り」「自国をアピールするデザイン」「電動化パワートレーンが主軸」など、ブランドのコンセプトが良く似ているからだ。
そこでこのパートでは、ともに2代目となるボルボXC60とレクサスNXを中心に、多角度から比べてみたいと思う。
まずはエクステリアだ。XC60はXC90から採用された次世代ボルボデザインを採用。ロングノーズ、ショートオーバーハング、スウェーデンを強調したデザインだが、エレガントなだけでなくスポーティな要素も備える。
主張を強めたフロントグリル/ヘッドランプ、削り出したような表現のフェンダー/ドア、短い全長なども相まって、基本的には力強く筋肉質なイメージだ。
不思議なのは、初代XC60とはプロポーションもパッケージも全然違うが、どことなく共通性を感じる点だ。つまり、初代の良い所はしっかりと受け継がれているということだ。ちなみにボディサイズは全長4710mm×全幅1900mm×全高1660mm、ホイールベース2865mmで、実は初代から大きくは変わっていない。
Tazunaコンセプトなど新たなデザインモチーフを採用
最新型のNXは新世代レクサス第一弾モデルということで、ボディに溶け込んだスピンドルグリル、面で構成される造形など、新たなデザインモチーフが随所に用いられている。
こちらは、実際に新旧で見比べるとデザインは別物だが、それでいながらも「あっ、NXだ!」と感じさせる要素はリアに力感を持たせたサイドのシルエットで、ここは初代のモチーフが唯一活かされている部分だ。ボディサイズは全長4660mm×全幅1865mm×全高1660mm、ホイールベース2690mmと先代より若干拡大されたがグローバルのマーケットでは平均的サイズだ。
どちらも主張は少なめながらも、ひと目でそのブランドだとわかる個性を備えたデザインだ。NXはスポーティなイメージが強いのとデビューしたばかりなので新鮮。XC60はデビューから4年を経過しているが、フレッシュさに円熟味が増した印象を受けた。
インテリアはどうか?XC60の縦型タッチスクリーンを中心に置く水平基調インパネは、先に登場したXC90とレイアウトは共通だが、コクピット感を高めた造形。このデザインは次世代ボルボデザインを表現したコンセプトカー三部作の1台「コンセプトクーペ」が忠実に再現されたもので、独特な風合いのドリフトウッドパネルや「隠れスウェーデン国旗モチーフ」など、細部まで抜かりなしだ。
NXはコンセプトカーのLFZで考案された「TAZUNAコクピット」を具体化している。視線を自然に誘うメーターフードやドライバー側に寄せてコクピット感を強調した14インチ大画面タッチスクリーンが特徴。煩雑だった各種操作スイッチも整えられ、使い勝手も引き上げられている。
どちらも物理的スイッチを極力なくし、多くの機能をタッチパネルで操作するインターフェイスという部分は共通だが、洗練度はシンプルなXC60に軍配が上がる。
居住性は2台ともに大人がゆったり過ごせる空間を備える。ラゲッジルームも十分以上のスペースで、パッケージに関しては甲乙つけ難いといえる。あと個人的には、XC60にオプション設定されるインテグレーテッドチャイルドクッションは便利な機能だと思った。