21インチの大径ホイールを難なく履きこなすボリューム感
大径タイヤが似合うシルエット、リフトアップに伴う優れた乗降性、そしてなによりフラットな乗り心地と気持ちのいい走り。
セダンの形にこだわったままではもはや、満足の行くレベルに達し得ない?「今、プレステージサルーンに熱望されている価値」を追求するために、16代目クラウンは、セダン(というより4ドアクーペ?)とSUVの「クロスオーバー」からスタートすることになった。
果たして、ここから始まるクラウンの新しいありように、期待していいものだろうか。まずは実車を見ながら、品定めといこう。
これは確かに「クロスオーバーならでは」だと思わせてくれるのは、その足もとの迫力だ。
トヨタブランドとしては史上最大級、2022年6月に発表されたレクサス新型RXと同等の21インチ大径アルミホイールは、実車を見てもやはり圧巻だ。印象が異なる10スポークが2タイプ用意されており、どちらもクロスオーバー化されたフォルムによくマッチしている。RS系とG系のレザー・パッケージ装着車に標準装備されるが、タイヤは225/45R21というちょっとユニークなサイズとなる。
目の当たりにすると、アルミホイールだけでなく実車もまた、そうとうなボリューム感の持ち主だと感じる。平面を極限まで廃し、それでいながら無駄なアクセントラインを巧みに省いて、シンプルな中にも躍動感あふれる存在感が演出されている。
四文字熟語でわかりやすく表現するなら「大胆不敵」。もっとも、「威容」と言うより「異形」と呼びたくなるほど実車は、アクが強いのだけれど。
明確にアグレッシブでパワフルなクロスオーバーらしさ
先代に対するボディサイズの拡大そのものは、意外にささやか(全長で+20mm、全幅で+40mm)だ。一方でホイールベースは2920mmから2850mmに縮小されつつ、トレッドは前55mm/後65mmもワイド化されているのが興味深い。
全長4930mmとのバランス感では、最近の新型車にしては珍しく前後オーバーハングが長めに感じられる。だからこそ、この独特の威圧感が生まれているのだろうか。新型クラウンの覚醒ぶりを端的に表現するにはやはり、セダンフォルムでは表現しきれないかもしれない。
クロスオーバーと言えば、メルセデス・ベンツなどはステーションワゴンの新種である「オールテレーン」が人気を博している。だが、新型クラウンのクロスオーバー化はより明確にアグレッシブでパンチ力抜群だと思う。
一方で新型クラウンの全高は1540mmと、ほどほどの高さ。最低地上高は145mmで、先代よりは10mmほど高いものの、ハードなオフロード走行向けとは言えそうにはない。けれど、おそらくはほとんどの機械式駐車場やタワーパーキングに収まってくれるのは、「都会派」としては素直に嬉しい。
機能性、デザイン性とともにこめられた「優しさ」
着座位置が従来モデル比で80mm高められているだけでなく、ドア開口部の形状やサイドシルの位置まで考慮され、優れた乗降性を実現していることも高く評価したい。とくに高齢者や身体が不自由な人に対してより優しい形は、これからのプレステージモデルに不可欠の素養だと思える。
「優しい」という意味では、金属加飾の質感にも温かみを追求したというインテリアもまた、魅力的だ。
情報関連の表示システムは、12.3インチのTFTカラー液晶メーターと、コネクティッドナビに対応した12.3インチディスプレイオーディオを贅沢に並べる。各種操作系とも水平方向に集約されているため、ともすれば平板な印象になりがちなレイアウトだが、新型クラウンはそこに、絶妙なアレンジを加えて、類まれな上質感を感じさせる。
たとえば、助手席側インストルメントパネルからドアにかけて力強い一筆書きのように描かれたアクセントラインは、なかなかシンプルにカッコいい。
センターコンソールからシフト部にかけてつながる折り返しもまた、ユニークなアレンジだ。助手席を優しく包み込むような造形で、ドライバーから見ると立体感に溢れ、ナビゲーターにとってはとても安心できるゆとり感を演出してくれそうだ。
最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」や、高度運転支援技術「トヨタ チームメイト」など、安心・便利なカーライフをサポートしてくれる先進機能の満載ぶりは、さすがのフラッグシップクオリティを担保している。実際に走って試してみなければ、そのありがたみは表現のしようがないのだけれど。