充実のハイパフォーマンス、ラグジュアリー、ハイエンドクラス
近年、SUVとは無縁だったメ ーカーの参入も当たり前になり、もはやラインナップしていないのはマクラーレンぐらいという状況になっているが、2022年はとくに高価格帯の車種やクロスオーバー系の動向が目を引いた。
ハイパフォーマンスモデルでは、車名のとおり707という現時点でカテゴリー最強のエンジンパワーを誇るアストンマーティンの「DBX707」が筆頭に挙げられる。
新たにボールベアリングターボチャージャーを採用した4L V8ツインターボを搭載。ローンチコントロールシステムの搭載も効いて、0→400km/h加速はべース車より1.2秒も速い3.3秒を達成し、最高速度も310km/hに達した。
よりアグレッシブになったド迫力のルックスは、もちろん冷却性能や空力の向上などの機能を兼ね備えている。もともとDBXはハンドリングには定評があったが、カーボンセラミックブレーキの採用により、バネ下重量は40㎏も の軽量化に成功した。これらにより美しさと究極的な速さと意のままの走りのすべてを手に入れた。
ポルシェはカイエンのトップグレードにターボGTをラインナップした。車名に「クーペ」とつかないが車体はクーペをベースとしており、「ターボ」比で90㎰ 増の640psを発生する4L V8ツインターボを搭載。足まわりだけでなくPASMやPDCCなど各種デバイスも専用チューニングされ、ニュルブルクリンク北コースでSUV最速タイム7分秒925をマークしている。
フラッグシップが正統進化。電動化へのシフトも進む
ラグジュアリーSUVでは、その元祖でありランドローバーのフラッグシップであるレンジローバーがフルモデルチェンジした。
全面刷新となった新型は、電動化を念頭に置いた新開発プラットフォームをはじめ、足まわりは最新のエアサスペンションや路面状況に応じて減衰力を制御する「ダイナミックレスポンスプロ」、初のツインバルブモノチューブダンパーなどを採用した。また、四輪操舵機構により歴代最小の回転径を実現した。
歴代モデルの特徴を受け継ぎつつシンプルさを追求したプロポーションや、サンクチュアリ(=聖域)のような空間を目指した上質なインテリア仕立ても目を見張る。5人乗りのほか、LWBのリアキャプテンシート仕様の4人乗りやレンジローバー初となる3列7人乗りをラインナップする。
さらには、高性能モデルの開発やビスポーク事業などを担う「SVO(スペシャル ビークル オペレーションズ)」が手がけた上級グレード「SV」を設定するなど、新たな試みに満ちている。
ハイエンドクラスでいち早くSUVを送り出したベントレーは、電動化においても先陣を切り、ベンテイガにPHEVを加えた。すでに海外では存在していたが、日本にはフェイスリフトを施した最新版が導入される。
伝統のW12やV8モデルとの視覚的な差別化は少なく、ベントレーならではの世界観を受け継ぎつつも、デジタルディスプレイがコクピットをモダンに演出しており、電力だけで最大約50km(NEDC値)の走行が可能となる。
売れ筋モデルを中心に改良で魅力が増したドイツ勢
手頃な人気モデルにも大小さまざまな動きがあった。日本で2番目に売れている輸入SUVであるフォルクスワーゲンのTロックは、内外装デザインの変更とインフォテインメント系のアップデートを実施した。
さらに、本国ではもともと存在したトップモデル「R」がマイナーチェンジを機に日本にも導入されることとなった。Tロックで唯一の4モーション(4WD)搭載車となり、兄貴分のティグアンRと共通の2L直4ターボは200kgほど軽い車両重量にあわせて出力が調整されているほか、ティグアンRに装着されるリアアクスルのトルクベクタリング機構はホイールベースが短く回頭性が十分に確保できることから設定されていないものの、コストパフォーマンスは破格と言える高性能SUVに違いない。
ドイツ御三家の売れ筋では、アウディSQ2とBMW X3/X4がマイナーチェンジを実施し、メルセデス・ベンツにはEクラスに次いでCクラスに初めてオールテレインが追加設定された。
SQ2とX3/X4は内外装と装備のアップデートが主体の変更で、X3/X4はハンズオフ機能や最新のコネクティッドおよび音声対話機能を設定したことに注目したい。Cクラスオールテレインは、ステーションワゴンをベースに車高を上げたクロスオーバーで、本格的な悪路走行も可能だ。