同じプラットフォームとエンジンを持つポロGTIとゴルフGTI
「ゴルフGTIにそっくり!」 ポロGTIに試乗してそう感じたのは、たしか先代のエンジンが1.8Lに置き換わったときのこと。
192psの最高出力は同時期のゴルフGTIの220psに匹敵するものだったし、DCT(DSG)が選べたのもゴルフGTIと共通。スポーティなのに恐ろしくスタビリティの高いハンドリングのおかげで、まったく不安を感じさせないまま高速コーナーを駆け抜けていくさまも、ゴルフGTIを彷彿とさせた。それどころか、「日本の狭いワインディングロードだったら、コンパクトなポロGTIのほうがむしろ有利かもしれない」とさえ感じたことを、昨日のことのように思い起こす。
あれから8年が過ぎて、ポロGTIとゴルフGTIを直接比較するチャンスが巡ってきた。まずは、2台の概要を紹介しよう。
最新のポロGTIはプラットフォームにMQBを採用する6代目ポロがベース。搭載されるエンジンはEA888と呼ばれる排気量2Lだが、先ごろ実施されたマイナーチェンジで最高出力は200psから207psへと引き上げられた。これにあわせてギアボックスは6速から7速のDCTに進化している。
一方のゴルフGTIはいうまでもなくゴルフ8がベース。したがってプラットフォームはMQBとなるので、この点はポロGTIと同じ。しかも、エンジンはEA888で、ギアボックスは7速DCTと、2台の成り立ちはどこまでもよく似ている。
ポロGTIとのスペック上の違いは、最高出力が245ps、最大トルクが370Nmと一段とパワフルになっている点がひとつ。その影響か、WLTCC燃費はポロGTIの15.6km/Lに対して、ゴルフGTIは12.8km/Lと、意外なほど大きな開きがある。
もうひとつの目立った違いは、リアサスペンションの形式である。ポロGTIは、ゴルフの1Lモデルと同じトレーリングアーム式となるのに対して、ゴルフGTIはより手の込んだ4リンク式を採用。この違いが乗り心地やハンドリングにどんな影響を与えるのかも注目したいところだ。
路面の様子が伝わりやすく鋭いレスポンスが魅力のポロ
先に試乗したのはポロGTI。正直に言って、乗り始めて1分と経たないうちに「ああ、フォルクスワーゲンは道を誤ったか」と思った。とにかく路面からの細かなショックが始終、伝わってくるのだ。
こういった無粋な振動を洗いざらい吸収し、どっしりと落ち着いた乗り味に仕上げるのがフォルクスワーゲンの流儀だったはずなのに、これはいったいどうしたことだろう? これまで歴代のポロGTIには何台も試乗したが、ここまで乗り心地が荒いGTIIは経験したことがない。ブランドの一大方針転換とも思えるこの変化に、私は深い戸惑いを覚えた。
ただし、足まわりのしなやかさが失われても、路面の不整によってハンドルがチョロチョロと振られることなく、しっかりと直進を保ってくれることには、ほっと胸をなで下ろした。同様にして、ステアリングインフォメーションが豊富で、路面の様子が克明に伝わってくる点も嬉しいところだ。
まるで、知らぬ間に風貌が激変していた旧友が、話してみれば昔とまったく変わってないことに気づいたときのような安堵感を、このときの私は味わったのである。
パワートレーンのレスポンスがシャープなこともポロGTIの美点。エンジンは全般的にトルクが豊富で、中回転域から高回転域にかけては、とりわけ吹き上がりが鋭くなる。しかも、エンジンが生み出したトルクをDCTが余すところなく前輪に伝達するうえ、ギアチェンジの速さがスーパースポーツカー並みに素早い。こうした魅力は新型にもしっかりと受け継がれていた。