小さなランボルギーニに対するニーズが確かにあった
ランボルギーニの設立者であるフェルッチオ・ランボルギーニは、特に購入価格と維持費を抑えた「小さな」ランボルギーニを求める市場があることを、以前から感じていた。
1970年代はじめ、彼は後にウラッコ(Urraco)となるモデルの開発を奨励し、1980年代にそれはジャルパ(Jalpa)へと進化させた。
1987年、ランボルギーニはよりコンパクトなモデルの実現を目指す「L140プロジェクト」を立ち上げている。プロトタイプが何度も開発され、最初はV8エンジン、次はV10とさまざまな技術が試された。
1998年、慎重に検討を重ねた結果、コンセプトとおおまかな寸法、それまでランボルギーニの市販モデルには採用されたことのなかった10気筒エンジンという要素のみをたたき台にして、すべてを一からやり直すことが決まった。
新しいエンジンを手掛けたのは、ランボルギーニに10年以上在籍し、当時テクニカルディレクターであったエンジニアのマッシモ・チェッカラーニと、技術部門でエンジンの開発設計を担当していたマウリツィオ・レッジャーニだった。
アウディ傘下に入ることでV10エンジンの開発が決定
2006年から2022年にランボルギーニのテクニカルディレクターを務めたマウリツィオ・レッジャーニは、次のように回顧している。
「L140にはオイルパンエリアにギアボックスを組み込んだ72度のV10エンジンを搭載していました。ランボルギーニで設計したエンジンでしたが、それは目的のモデル用に生産するには実際的ではありませんでした。
その上、エンジンの下にギアボックスを配置したことで重心が高くなり、ランボルギーニのスーパースポーツカーに期待されるドライバビリティやハンドリング特性が保証できなくなっていました。
このため、『ベビーディアブロ』というコードネームのプロジェクトが開始されたときにはV8の採用が決まり、アウディのものを含め、既に市場に出ているエンジンの中から候補を選ぶことになりました。
その後、アウディ傘下に入ったことで、アルミニウム製のチューブラーフレームと10気筒エンジンをランボルギーニで設計し、新しいトランスミッションをマニュアルとロボタイズドの両方で用意するという、完全に新しいモデルを開発することが決まりました」
こうして、初代ガヤルドには5L 10気筒V型90度の4バルブDOHCエンジンが搭載された。当時の最高出力は500psと公表されている。
典型的な72度ではなく90度を採用したのは、エンジンの高さを抑えることでレイアウトに有利に働かせ(エンジンフードを低くすることでリアの視認性を向上)、重心を低くしてダイナミクス向上を図るためだ。
また、クランクピンを18度オフセットさせることで、等間隔燃焼を実現している(エンジンのスムーズさを保証)。潤滑方式にはドライサンプを採用し、過酷な走行環境下でも完璧な潤滑が可能になるだけでなく、重心もさらに低くすることができた。