ロボタイズド、シーケンシャル方式のギアボックスも開発
マウリツィオ・レッジャーニは、このV10ユニットの生い立ちについて、次のように説明している。
「計画通りの台数を生産するためには、V10に90度のV角を持たせる必要があったため、90度でも等間隔燃焼を実現できるようにクランクシャフトで『スプリットピン』を採用することになりました。
クランクケースはランボルギーニの設計者が改良、再設計し、ライナーを従来のニカシルコーティングではなく過共晶アルミニウム合金とし、直接アルミニウムで鋳造できるようにしました。
これによってシリンダー間の間隔、ひいてはエンジンの長さ、重量、コストも削減できました。こうして、初代ガヤルドに搭載する5L 90度V型10気筒MPIエンジンが誕生したのです」
初のV10は、5L、ドライサンプ潤滑方式、各シリンダーバンクにオーバーヘッド・カムシャフトを備えたDOHC、可変バルブタイミング(1シリンダーあたり4バルブ)、チェーン駆動と、最先端の技術を駆使していた。
6速ギアボックスも、最新世代のダブルおよびトリプルコーンシンクロを備える。最適化された制御・噛み合い方式を採用してエンジンの後方に配置、AWDには実績のあるVTシステムを採用した。
この時、基本的な機構はそのままに、ロボタイズド、シーケンシャル方式のギアボックスも開発されている(ランボルギーニ「eギア」、初代モデルではオプション設定)。
全アルミニウム製のフレームは、鋳造接続部品に押出成形部品を溶接したものがベースだ。このフレームに、ボディ部品がそれぞれの機能によって異なる方式(リベット、ネジ、溶接)で組付けを行った。その他の装着部品(バンパーなど)には熱可逆性樹脂を使用し、ボルトで締結したのだった。
コンパクトながら躍動感を感じさせるデザインに仕上げた
デザインプロジェクトは2000年にスタートした。「イタルデザイン・ジウジアーロ」の提案をベースに、ルク・ドンカーヴォルケ率いる新設ランボルギーニ・チェントロスティーレによって磨き上げられ、熟成されていった。
デザイナーに求められていた、厳しいながらも心躍る課題は、ランボルギーニ的なフォルムの属性を洗い出し、それらを組み合わせて完全に新しい1台を生み出すことだった。
求められたサイズ感とそれにフィットしたパフォーマンスは、デザイン全体に引き締まったアスリート感をもたらしていた。十二分に確保されたホイールベースと短縮されたオーバーハングは、よりダイナミックな印象を醸し出すことになる。
ガヤルドのアイコニックなデザインの主な特徴は、ボディと一体となったキャブフォワードのコックピット、鋭角に横たわるフロントガラスと張り詰めたピラー、明確な線が入った平面の複雑な処理、空気の流れに沿った冷却システム要素の配置など、航空機の影響を強く感じさせる。それは、2001年に発表されたムルシエラゴでも採用されたモチーフだった。
しかし、発売時にガヤルドを突出した存在にしたのは、その高い性能に加え、普段使いの1台としても十分なドライバビリティ、信頼性、日常的な実用性を併せ持っている点だった。イタリア警察への車両提供は、まさにその万能性を物語るエピソードのひとつと言えるだろう。