進歩したパワートレーン搭載のスポーティ版も
現在は乗用車部門から撤退している日野自動車工業が、フランスのルノー4CVの国内組み立て(ライセンス生産)を開始したのは昭和28(1953)年のことだった。生産はほぼ10年間にわたって続けられたが(昭和38年まで)、その間、昭和36(1961)年にコンテッサ900がデビューした。
もちろんルノーの国内組み立てで学んだ技術とノウハウをベースにした作品で、その設計は昭和31年から開始され、 33年1月に試作車第一号が完成している。
コンテッサはリアエンジン車の4CVの流れをくんだ4ドア5座のRRセダンで、エンジンは4CVの748ccを上回る893ccの直4OHVだった。ルノーの影響は設計の至るところに反映しており、当時の欧州車がそうであったようにボア×ストロークも60×79mmの超ロングストロークが採用されていた。
サスペンションもルノーゆずりの前がウイッシュボーン/コイル、後がスイングアクスル/コイルの4輪独立懸架方式が採用されていた。このへんも当時の国産車としては斬新だった。
4CVと異なる最大の特徴は、電磁式ハンドル・チェンジを持ったギアボックスを取り入れたことで、これはRR車固有のデメリットである、長いケーブル操作によるギア・チェンジの不利をなくすためだ。さらに同社は神鋼電機との共同開発による電磁クラッチもオプションとして設定している。
このコンテッサ900の最初のスポーティ版は昭和37(1962)年7月登場のSタイプだが、これだけでは終わらなかった。昭和39(1964)年8月、コンテッサはフルモデルチェンジを行い、4ドアセダンのコンテッサ1300を発売したのだ。
エンジンは新設計のGR100型、直4OHVタイプで排気量は1251cc(71×79mm)、最高出力55ps/5000rpm、最大トルク9.7kgm/3200rpmを発生した。連続高速走行を前提として、耐久性を上げるためクランクシャフトは5個のベアリングで支持され、またバルブ配置はスムーズな吸排気が可能なクロスフロー・タイプを採用するなど、かなり進歩したメカニズムも特徴だった。