スポーツモデルや電動車づくりに長けたイメージが強いアウディとBMW。そのフラッグシップサルーンであるA8と7シリーズは、運転する楽しさ、至高の乗り心地と快適性、電動化など現代のラグジュアリーサルーンに求められるすべての要素を備えた稀有な存在である。(モーターマガジン2024年3月号より)

洗練されたシャシのセットアップ。旋回性にも優れる

そんなのBMWじゃないという意見もあるだろう。が、7シリーズの真の驚きはこれらを踏まえた上で、走りが真のBMWであることだ。しかもパワートレーンの種別を問わない。BEVのi7でさえそう思わせる。

画像: 「オートマチックセルフレベリングコントロール付きアダプティブ2アクスルエアサスペンション」や「電子制御ダンパー付きアダプティブサスペンション」を標準装備する。

「オートマチックセルフレベリングコントロール付きアダプティブ2アクスルエアサスペンション」や「電子制御ダンパー付きアダプティブサスペンション」を標準装備する。

個人的には12気筒を搭載した先代のM740iは今でもベストなBMWの1台だが、i7のM70は見事にその後継になり得ている、そんな印象だ。

取材車は逆にもっとも守旧的なパワートレーンの740iだったが、これもまた見事なまでにBMWである。もちろんお約束のストレート6云々もあるものの、巨体を動かすには必要十分なパワーに合わせてすっきり優しく躾けられたシャシのセットアップがまた素晴らしい。

このクラスのご多分に漏れず電子デバイスが山盛りで3200mmオーバーのホイールベースも感じさせないほどの旋回性を誇る一方、そういった調味料に依った味付けとはまったく思わせないノド越しの良さがある。

元来、BMWの乗り味は高い解像度や緻密な応答性に裏付けられた繊細さこそが軸だったように思う。だが昨今はダイナミクスの幅が広すぎるあまり、その繊細さが薄れてしまうことも珍しくない。左様にハイテクの塊だが、7シリーズのドライバビリティには旧き佳きBMWの微妙なタッチが宿っているように思う。それが得も言えぬ心地よい肌感を生み出していることは間違いないだろう。

A8のPHEVモデルはシリーズを牽引する存在

アウディは電動化に関して、どちらかといえばメルセデス・ベンツ寄りの戦略を採る。すなわちBEVのトップレンジはタイカンと同じPPEアーキテクチャーを持つeトロン GTシリーズが担いつつ、トラッドなLセグメントニーズの汲み上げはA8の電動化で対応するという方策だ。

画像: PHEVモデルの日本導入が始まったのは、2023年6月から。アウディとしては「A3スポーツバック e-tron」 以来の8年ぶりのPHEVモデルであり、クワトロとの組み合わせは初となる。

PHEVモデルの日本導入が始まったのは、2023年6月から。アウディとしては「A3スポーツバック e-tron」 以来の8年ぶりのPHEVモデルであり、クワトロとの組み合わせは初となる。

但しeトロン GTはスポーツセダン寄りの色合いが強いこともあって、A8の側に担わされた役割は重い。ちなみにシェアの高い中国ではホルヒのブランドでスーパーロングボディも展開されている。

日本ではショートとロング、2つのボディバリエーションを展開するが、今回の取材車両は60TFSI e クワトロとなる。従来の60TFSIは4L V8ツインターボを搭載していたが、電動化が推し進められる中、こちらは3L V6ツインターボを軸に8速ATとの間に136psを発生するモーターを挟み込んだPHEVで、システム総合出力は462ps、トルクは700Nmを発揮。

0→100km/h加速は従来の60TFSIにわずかに劣るが、そのぶんを補えるモーターのトルクとともに60TFSI e クワトロは17.9kWhのバッテリーを搭載、WLTCモードで最大航続距離54kmのBEV走行を可能としている。

要はS8を別とするA8のトップグレードはPHEVになるという、最近の欧州勢にありがちなグレード展開となるわけだ。この良し悪しについては人それぞれの判断になると思う。

だが走りについてはネガティブなことはまるで感じないほど2つの動力源の協調制御も洗練されている。この“そつのなさ”は実にアウディらしい。

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