スポーツモデルや電動車づくりに長けたイメージが強いアウディとBMW。そのフラッグシップサルーンであるA8と7シリーズは、運転する楽しさ、至高の乗り心地と快適性、電動化など現代のラグジュアリーサルーンに求められるすべての要素を備えた稀有な存在である。(モーターマガジン2024年3月号より)

A8の駆動システムは緻密に制御されわずかな隙もない

A8はSクラスや7シリーズといったライバルよりやや年配で、現在はモデルライフ後期の世代となる。ゆえにインフォテインメントやアンビエントなどの装備にちょっと事務的なところを感じなくもない。というより、20年以降に登場したSクラスや7シリーズの飛ばしっぷりが想定以上だったという見方もできる。

画像: インパネは平滑な光沢パネルで高級感を演出。センター画面は2分割式で、上は主に表示用、下は主に操作と入力用となる。

インパネは平滑な光沢パネルで高級感を演出。センター画面は2分割式で、上は主に表示用、下は主に操作と入力用となる。

中国に代表される主力市場の嗜好がわかりやすい空間価値だったところを、いかに早くキャッチアップするか否かでその盛り方も変わっただろう。顕著に社会的な端境期である中、アウディもそこにちょっと揉まれた感はあるのかもしれない。

でもそのぶん、走りは複雑なメカニズムを丁寧に纏めていて、前述の通り余計なバリもなく精細度は非常に高い。BMWが繊細さであればアウディは四駆を完璧に手なづけた精密さ、そして応答の正確性がドライバビリティの素地にあるわけだが、最上位モデルのA8はそれだけではないむっちりと有機的な乗り心地の味わい深さも魅力として加わってくる。

A8からは7シリーズほどの真新しさは伝わってこないが、そのぶん図らずもアウディにとっては苦手な領域だっただろう、滋味のようなものが感じられるようになった。今となっては6ライトキャビンが特徴的なその佇まいも、ライバルより俄然オーセンティックでもある。

何より様式を重んじる方面のニーズが一番大きいLセグメントにあって、声高に主張せずとも静かないいものというA8の存在感は、世の中で当然求められるべきものだと思う。
(文:渡辺敏史/写真:井上雅行、佐藤正巳)

テスト車両 主要諸元

BMW 740i Mスポーツ 主要諸元

●全長:5390mm
●全幅:1950mm
●全高:1545mm
●ホイールベース:3215mm
●車両重量:2120kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2997cc
●エンジン最高出力:280kW(381ps)/5500rpm
●エンジン最大トルク:520Nm(53.0kgm)/1850-5000rpm
●モーター種類:交流同期電動機
●モーター最高出力:13kW(18ps)/2000rpm
●モーター最大トルク:200Nm(20.4kgm)/0-500rpm
●システム最高出力:280kW(381ps)
●システム最大トルク:540Nm(55.1kgm)
●WLTCモード燃費:12.8km/L
●駆動方式:RWD
●トランスミッション:8速AT
●タイヤサイズ:フロント 255/45R20・リア 285/40R20
●乗車定員:5名
●車両本体価格:1588万円(税込)

アウディ A8 60 TFSI e クワトロ 主要諸元

●全長:5190mm
●全幅:1945mm
●全高:1470mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2350kg
●エンジン:V6DOHCターボ
●排気量:2994cc
●エンジン最高出力:250kW(340ps)/5000-6400rpm
●エンジン最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpm
●モーター種類:交流同期電動機
●モーター最高出力:100kW(136ps)/2390-7000rpm
●モーター最大トルク:400Nm(40.8kgm)/0-2390rpm
●システム最高出力:340kW(462ps)
●システム最大トルク:700Nm(71.4kgm)
●WLTCモード燃費:10.6km/L
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:8速AT
●タイヤサイズ:フロント 265/40R20・リア 265/40R20
●乗車定員:5名
●車両本体価格:1320万円(税込)

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