ノーマル車や標準車などというあり方を素直に喜べない、という人も少なくないだろう。そこに、どうしても“多数派のための妥協点”があると考えてしまうからだ。クルマ好きらしいもっと絞り込んだ仕様を望むならば、ワークスチューンは格好の存在だ。(Motor Magazine誌 2024年3月号より再構成)
GRヤリスとは似て非なる仕上がり
リアドアを廃した上で空力特性向上に重きを置いて後ろ下がりの専用ルーフラインを採用するなどしたGRヤリスと比較すると、5ドアボディを踏襲してラゲッジスペースも同容量を確保するなど、カローラの一員として基本的実用性はまったく犠牲にしていない。
見た目の硬派さにちょっと身構えながら、短いストローク量のシフトで1速をセレクトしてクラッチをミートさせるとGRカローラはあっけないほどに楽々とスタート。
高いエンジン回転数は必要なく、急ぐのでなければアイドリング状態のままアクセルペダルに触れることなくエンゲージをしてもOK。街乗りシーンでは、1段飛ばしの操作すら可能など、低回転域でのフレキシビリティの高さは呆れるほどだ。
右足を深く踏み込めばそんな低回転域からでもターボブーストがレスポンス良く立ち上がるのを実感。基本ディメンション決定の際に「排気干渉の小ささを考えてあえて3気筒を選択した」という開発陣のコメントを思い出す。
さらに高回転域に至るまで一切の頭打ち感を伴わない点も印象的。ちなみにホットなドライビング中には「大き過ぎる」センターディスプレイが視界内に割り込んでくる点は気になった。一方で、注視していなくてもイエロー→レッドと色彩を変えることで、回転リミットの接近を認識できるタコメーターの表示は、実用的ですこぶる好印象だ。
基本は硬めのセッティングで4WDシステムと相まってオーバー300psのパワーを余裕をもって受け止めながら、振動のカドは丸められて街乗りでも我慢を強いられない乗り味に「カローラのGRモデル」としてのキャラクターが感じられる。やはり、GRヤリスとは似て非なる仕上がりだ。