ボルボが2030年までに全ラインナップをBEV化する電動化戦略を撤回すると同時に、次なる戦略の核となるモデルとして発表したXC90のマイナーチェンジ。北欧2カ国に渡って開催された新型XC90の試乗会に参加し、プレミアムSUVの進化を体験した。

スポーツ性と快適性相反する性能を高めた

試乗コースはコペンハーゲンの西側、エーレスンド海峡を渡すオーレスン リンク(約16km)を通ってスウェーデンのマルメーへと入り、その先の高速道路から市街地、住宅街や郊外までさまざまな交通シーンを周遊するもの。

新型の中でもエントリーモデルという位置付けのB5、搭載するエンジンは2L直4ターボという形式こそ同じだが、圧縮比を10.5→11.5に高めるとともにミラーサイクルを採用して燃焼効率を向上させている。最大トルクは10Nm向上して360Nmに、MHEVシステムのモーターも10kW/40Nmに向上しており加速感は高められているはずだが、体感できるほど大きな違いではない。

画像: ナチュラル素材のウッドトリムとリサイクル素材を組み合わせたT8のインテリアは、シートに合わせるような明るいカラーコーディネート。

ナチュラル素材のウッドトリムとリサイクル素材を組み合わせたT8のインテリアは、シートに合わせるような明るいカラーコーディネート。

こうした動力性能よりも、モーターアシストによる発進時のスムーズさや遮音材を追加したことによる静粛性の向上など、快適性を高める改良の効果が目立った。標準仕様のサスペンションも優れた乗り心地を実現するために、路面状況に応じてダンピングを調整する機構が盛り込まれている。郊外を走っているとアスファルト補修による段差を多く見かけたが、乗り越えたときの音や衝撃は想像するよりはるかに小さい。

かと思えば、以前に試乗したエントリーグレードよりもフラットライドな気持ちのいい走りも見せてくれるから興味深い。4WDであることも要因のひとつに挙げられるが、レーンチェンジや比較的高速のカーブが長く続く高速道路のジャンクションで操縦安定性の高さ、運転の楽しさを味わえた。

画像: フワフワせず、かたくもない。PHEVのT8は約2.3トンという重量級ボディながら、エアサスペンションとの組み合わせで、街中から高速道路まで気持ちのいい走り味。

フワフワせず、かたくもない。PHEVのT8は約2.3トンという重量級ボディながら、エアサスペンションとの組み合わせで、街中から高速道路まで気持ちのいい走り味。

試乗前に受けた「よりダイナミックでコンフォート」というまさに説明どおりのキャラクターであったのだが、試乗ルートの折り返し地点で乗り換えた、ナッパレザー仕様の明るいインテリアとしたPHEV「T8」でもやはり同じ感想を抱くことになった。

ただし、こちらはオプション設定されているエアサスペンションを装着した仕様。B5とT8で車両重量の差が200kg近くあるので直接比較できないが、衝撃吸収後の収まりの良さという意味ではエアサスペンション仕様にやはり軍配があがる。広いモーター駆動領域、回生ブレーキの効き具合を交通環境に合わせてパドルスイッチで調整できる機能など、PHEVらしい特性もあいまって発進から巡航、停車までとにかくスムーズな運転を可能にしてくれる。まるで自分の運転が上手くなったかのようにサポートしてくれる機能・性能は、多人数で移動できる3列シートSUVにおいて重要なファクターだ。

デビューから10年。XC90は熟成を重ねて完成度は極まり、クラシックボルボのように今後も長きにわたって愛されるキャラクターを持っているのではないかと確信した。

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