紫のテメラリオ、存在感の理由

最高許容回転数10000rpmに到達するV8ツインターボエンジンPHEVを搭載する「新世代の猛牛」テメラリオは純粋な「速さ」だけでなく、造形と体験で夢を更新してくれる。
実はテメラリオ、Motor Magazine誌には何度も登場している。直近では2025年2月号でも日本国内で撮り下ろして紹介した。今回も特集の表紙撮影に合わせ、先行して車両を押さえた。
ただし、撮影時は未登録車のため自走での移動は限られた敷地内のみ。エンジンは始動できたが、走行はごく短距離に留まった。10000rpmまで回る4L V8ツインターボの『アイドリングだけ』を味わうというもどかしい体験である。それでも、ビビッドな紫を纏ったテメラリオは、そのモヤモヤさえ払拭するほどの『スーパーカー然』とした存在感だった。
鍵はやはりスタイリングだ。以前、別な色で見た際には上品ながら幾分おとなしい印象も受けた。だが本来はド派手にもなり得る紫を、ここまで気品を保ったまま着こなすのは、デザインの完成度があってこそだろう。デザイン統括を務めたミーティア・ボルケルト氏は「レヴエルトとは明確に差別化したかった。極力ラインを減らし、よりクリーンな新しいデザインランゲージを採用した」と語る。

リアスタイルはレヴエルトともまったく異なる新しいデザイン。オートバイに影響を受けたというタイヤがむき出しの姿は新鮮で、電動化モデルが出揃ったランボルギーニ、新世代のスーパーカーを体現する。
そのインスピレーション源のひとつはオートバイ。切れ上がったリアまわりのメカニカルな処理はまさにバイクのそれ。325幅のリアタイヤはトレッドの半分以上が露わで、かなり斬新だ。
コクピットは、従来型より意外に余裕がある。操作系はレヴエルトにかなり近く、メーターやセンターコンソールのレイアウトも含め、乗り込んだ瞬間に気分は映画「トップガン」のマーヴェリック。自然と頭の中にはあの音楽が流れる。鼓動だって、もう高鳴りっぱなしだ。
それから約1カ月。ポルトガルでの試乗機会が巡ってきた。会場はエストリル・サーキット。試乗車のボディカラーは美しいブルーだ。やはり注目は、超高回転型V8ツインターボだろう。
アジアの中でもランボルギーニの販売が好調な日本では、いまだV12の人気が圧倒的。先行のレヴエルトも多くのバックオーダーを抱える。だがウラカンの後継となるテメラリオはV10自然吸気(以下、NA)ではなく、V8ツインターボ+PHEVを採用した。NA礼賛派の目にはどう映るのか。