彼らのCセグメントのクオリティは、異例でもあった。
フォルクスワーゲン・タイプ1は第二次大戦後における西ドイツ経済の復興のシンボルだった。チャーミングな「カブトムシ」=ビートルは同時に、BMCミニやフィアット500といったマイクロカーよりも日常性に優れた大衆車として高く、そして長らく、評価されることになる。同ブランドにとって今もなお、もっとも重要なヘリテージモデルであろう。
そんな「大衆車の王様」も、主役の座にずっととどまり続けるわけにはいかなかった。フォルクスワーゲンは早くから後継モデルの準備を進め、何年もの試行錯誤を経てついにパーフェクトな回答を導き出す。それがイタリアの巨匠、ジョルジョット・ジウジアーロとのコラボレーションで誕生した2ボックススタイルのゴルフだ。
1974年に誕生したゴルフはつまり、21世紀初頭まで生きながらえた名車ビートルをも上まわる実用大衆車として自動車界に降臨し、それゆえに大衆車のスタンダードとしてひとつのカテゴリーを形成するに至った。Cセグメントのハッチバックがそれだ。
取りまわしに優れたコンパクトカーでありながら、十分な居住性と積載性を確保し、街乗りから長距離ドライブまで上質な走りを提供する万能なユーティリティモデルとして、Cセグハッチは長きにわたり「不動の人気」を保ってきた。その間、スポーツモデル(いわゆるホットハッチ)やスタイルバリエーション(セダンやワゴンなど)を追加し、さらにはBMW 1シリーズのような上級移行モデル(プレミアムC)まで生み出して勢力を拡大、なかでも欧州マーケットでは無敵の存在となった。

礎を築くものだけが見られる、Cセグメント最新ドイツハッチの世界。BMW 120(左)とフォルクスワーゲン ゴルフ GTI。
いかにオールマイティなカテゴリーとはいえ、半世紀近くも天下が続いたとあれば人々には飽きもくるらしい。近年、コンパクトモデルを中心としたSUV勢の躍進著しく、欧州市場における乗用車シェアでも半数を占めるまでに成長すると、その間Cセグメントの市場シェアは半分近くに落ち込んでしまった。立場が逆転したのだ。
もちろん、SUVにしたところでその多くは既存のハッチバックやセダンとプラットフォームを共有しているから、ハッチバックやセダンは廃れたもののそのマーケットはそのまま背の高いSUVへと引き継がれたと考えていい。それゆえセグメントをボディサイズだけで区別すれば「Cセグメントは生き残っている」とも言えるのだが、それはさておき・・・。
今回改めて検証したのはCセグメントの象徴というべきハッチバックモデルの現在地である。名車ビートルをも超える万能車として誕生したはずのハッチバックモデルには今、レッドアラートが点っていると言っていい。世の中の目線が背の高いSUVにばかり集中するということは、とりもなおさずSUVが、いろんな意味で、優秀な実用車であることの何よりの証であろう。それを否定するつもりは毛頭ない。SUVがサイコーだという方は他のカテゴリーを気にすることなく数多ある選択肢から選んでいただきたい。
けれども、だからと言って本当に背の低いハッチバックモデルは時代遅れで役立たずなカテゴリーだろうか。というわけで今回は改めてCセグハッチの最新モデル、スタンダードたるフォルクスワーゲン ゴルフのしかもGTIと、プレミアムCの雄たるBMW 1シリーズの実用グレード120、を試してみることでSUVにはないハッチバックモデルの魅力を再発見してみたいと思っている。
