2008年、2代目アウディA3がフェイスリフトで品質向上とパワートレーンの一新を果たして、まるで車格を上げるように登場した。1996年の初代誕生以来、熟成を重ねて11年、兄弟車のゴルフがフルモデルチェンジの道を選んだのに対し、A3は熟成の道を歩んでいる。Motor Magazine誌ではこのアウディA3の日本上陸にあわせて、ショーデビューを果たしたばかりの6代目ゴルフと比較しながら、新しいA3を徹底的にテストしている。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

動力性能になんの不満もない1.4TFSI搭載モデル

それはともかく、A3初の1.4Lエンジンにこのところのフォルクスワーゲングループが得意とするデュアルクラッチとランスミッションを組み合わせた1.4TFSIの走りは、「なるほどこれで十分でしょう」と誰もが納得するに違いない自在感を味わわせてくれるもの。とくに感心するのがトランスミッションの微低速領域でのマナーの良さ。例えば、きつい傾斜のついたガレージへの進入操作などで、多くのDCT搭載モデルは時に唐突な動きを示すため扱い辛さを感じることが少なくないが、このモデルに搭載の「Sトロニック」を名乗る7速DCTはそのあたりの動きがピカイチのスムーズさなのだ。

これならば、これまではトルコンATにしか乗ったことがないという人の乗り換えでも何ら問題はなし。もちろん、広い変速レンジを持ちつつも各ギア間のステップ比が小さい7速仕様ゆえ、加速の能力にも長けている。100km/hクルージング時でわずかに2200rpmほどにすぎないエンジン回転数による優れた静粛性と際立つ低燃費を実現させつつ、いざ加速というシーンでは低回転域からただちにブースト圧を高める直噴エンジンと電光石火で自在な変速を行うSトロニックが、小さな排気量を忘れさせる力強い加速を演じてくれるのだ。

そんなこのパワーパックによって山道を元気良く駆け抜けてみようとすると、早くも5500rpm付近から訪れる回転上昇の頭打ち感がちょっと残念。が、そんな領域での特性というのは、そもそもこのエンジンにとってみれば「圏外」ということだろう。常用シーンでは直噴システム+小排気量がもたらす燃費の良さを最大限に発揮し、強い加速が必要となる際にはターボチャージングを行うことでパワーをサポートする、それこそがこのエンジンが狙った最大の特性であり、そして特長であるに違いないからだ。

1.4TFSIのフットワークのテイストは、あまりに素晴らしい動力性能に比べてしまうと、正直、さほど印象に残るものではなかった。しっかりとした接地感、自然なハンドリング感覚、きっちりと効くブレーキなど、どこをとっても優等生ではあるのだが、だからと言ってことさらに特徴ある味わいを演じてくれはしなかった。

それは決してA3というモデルのウイークポイントにはならないであろうが、一方でセールスポイントとなることもないだろう。ただし、このあたりが「乗ればゴルフと同じじゃないか」と言われてしまう要因にはなりそう。例えば、コンフォート性能はある程度犠牲にしてでも「ピンシャン」と威勢の良い走りがキャラクター的に許されるMINIの場合などとは大きく事情が異なる、アウディならではのクルマづくりの難しさだろう。

画像: A3スポーツバック1.4TFSI。エントリーモデルのエンジンを1.6から1.4TFSIに変更。さらに7速Sトロニックを装備して、格段に魅力をアップしている。

A3スポーツバック1.4TFSI。エントリーモデルのエンジンを1.6から1.4TFSIに変更。さらに7速Sトロニックを装備して、格段に魅力をアップしている。

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