2.0TFSIクワトロはもはやスポーツカー
そんな1.4TFSIから2.0TFSIクワトロへと乗り換えると、「こちらはスポーツカーだな」と正直、第一印象でそう感じた。エンジンのボリュームアップに加え後輪駆動系がアドオンされることもあって、比べれば車両重量は160kgも重い1540kgに達する。が、最高出力200psを発する直噴ターボ付きエンジンはそうした重量増など軽々と跳ね除けて強力な加速力を披露。ちなみに0→100km/h加速タイムは、1.4TFSIでも実用車としては文句なしの9.3秒ながら、こちらはわずかに6.7秒と遥かに俊敏。「これでは今後導入のS3の立場を危うくしてしまうのでは」と余計な心配すらしたくなる。
今回の2.0TFSIクワトロのテスト車には、様々なドレスアップアイテムを装着したSラインパッケージに加え、内部の磁性体を電子制御することで減衰力を可変としたA3シリーズには初採用のダンパー「マグネティックライド」もオプション装着していた。とくに後者の効果は絶大で、240km/hに達しようという最高速の持ち主ながらタウンスピードでの快適性も文句なし。一方、スポーツモードを選択すると上下Gの強さは確実に増してしまうものの、コーナリング時には姿勢変化が抑えられて、よりダイレクトなハンドリング感覚を味わわせてくれることも確認できた。
ただし、さらにHDDナビゲーションパッケージをも加えたテスト車両の価格は、実に530万円をオーバーするという高価さ。それを例えばメルセデス・ベンツのラインアップに照らしてみれば、そこではA/B両クラスの価格帯を軽々と飛び越えて、もはや完全にCクラスのそれにラップするということになってしまう。
もちろん、アウディはプレミアムなクルマを送り出すメーカーと納得の上で手に入れるユーザーは、ある程度割高なコストを支払う用意はあるだろう。けれども、客観的に見て「A3がCクラスよりも高価」と言われた時、そこではいくら装備・仕様の逆転現象が存在していたとしても、なかなか世間一般に理解を求めるのは難しいのではないだろうか。
このあたりもまた、常々行われてしまうゴルフとの価格比較とは別次元での、A3ならではのセールスの難しさということになるのかも知れない。果たしてA3の、そしてアウディ車ならではの「価格には変え難き価値観」とは何なのか。結局のところ、日本でのアウディのトライというのは、この先もこうした点をいかに訴求していくかにかかっているように思う。(文:河村康彦/写真:永元秀和)
アウディ A3スポーツバック 1.4TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4290×1765×1430mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1389cc
●最高出力:92kW(125ps)/5000rpm
●最大トルク:200Nm/1500-4000rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●10・15モード燃費:15.8km/L
●タイヤサイズ:205/55R16
●車両価格(税込):299万円(2008年当時)
アウディ A3スポーツバック 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4290×1765×1430mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1460kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:118kW(160ps)/4500-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●10・15モード燃費:14.2km/L
●タイヤサイズ:205/55R16
●車両価格(税込):357万円(2008年当時)
アウディ A3スポーツバック 2.0TFSI クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4290×1765×1430mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1540kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:147kW(200ps)/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●10・15モード燃費:12.0km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格(税込):439万円(2008年当時)