スポーツモデルとして求めたくなるものは何か
そんなボクスター用とはやはり10ps/10Nmが上乗せ表示となるエンジンを積むケイマンは、しかしSグレード同士の差とは異なり、明確によりパワフルであることが実感できるのは意外だった。これが本来の姿なのか、あるいはテスト車両の個体差も含んでのことなのかはハッキリしないが、ボクスターSとケイマンSのパワー差がまず体感できなかったのとは対照的だ。
ところが、そんなパワフルさの違いがクルマとしての魅力度を決定的に支配するのかとなれば「さにあらず」で、ボクスターよりも明らかにパワー感には長けていた今回の2.9Lケイマンが発する魅力度は、ボクスターを凌ぐものとは思えなかったのだ。
ひとつは、同じ17インチのシューズを履くにもかかわらず、どうもこちらの方が軽快な乗り味には乏しかったこと。さらなるスポーツ性を表現しようと採用された「ボクスターよりもハードな足まわり」は、より強い突き上げ感とドラミングノイズを生み出す結果になっていたし、テストした4車中で最も重い味付けだったパワーステアリングも、ミッドシップカーならではの軽快なハンドリングを感覚的にスポイルしているように思えてしまった。
MTの6速ギアに対して、さらに3割近くもハイギアードに設定されたPDKの7速ギアのレシオも、2.9Lエンジンとの組み合わせでは「痛し痒し」という印象。100km/h時に1900rpmという設定は平坦路のクルージングでは確かに素晴らしい燃費削減効果をもたらすが、わずかにでも再加速を必要としたり上り勾配にさしかかると、まったく「堪(こら)え性」なくダウンシフトを行う。
そんな自在なシフトの動作もPDKの特徴だと頭では理解しつつも、せわしなく変動するエンジンサウンドとタコメーターの動きは、スポーツ派ドライバーを喜ばす類のものだとは、とても思えなかったからである。(文:河村康彦/写真:永元秀和)
ポルシェ ボクスターS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1800×1295mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3436cc
●最高出力:228kW(310ps)/6400rpm
●最大トルク:360Nm/4400-5500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●10・15モード燃費:8.3km/L
●タイヤサイズ:前235/40ZR18、後265/40ZR18
●0→100km/h加速:5.2秒
●最高速度:272km/h
●車両価格:799万円(2009年当時)
ポルシェ ケイマンS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4345×1800×1305mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1390kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3436cc
●最高出力:235kW(320ps)/7200rpm
●最大トルク:370Nm/4750rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:MR
●10・15モード燃費:8.4km/L
●タイヤサイズ:前235/40ZR18、後265/40ZR18
●0→100km/h加速:5.2秒
●最高速度:277km/h
●車両価格:830万円(2009年当時)
ポルシェ ボクスター 主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1800×1290mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1370kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:2892cc
●最高出力:188kW(255ps)/6400rpm
●最大トルク:290Nm/4400-6000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:MR
●10・15モード燃費:9.4km/L
●タイヤサイズ:前205/55ZR17、後235/50ZR17
●0→100km/h加速:5.9秒
●最高速度:263km/h
●車両価格:608万円(2009年当時)
ポルシェ ケイマン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4345×1800×1305mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1410kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:2892cc
●最高出力:195kW(265ps)/7200rpm
●最大トルク:300Nm/4400-6000rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●10・15モード燃費:9.5km/L
●タイヤサイズ:前205/55ZR17、後235/50ZR17
●0→100km/h加速:5.7秒
●最高速度:263km/h
●車両価格:708万円(2009年当時)