走り出しは「大きなプリウス」にも思えたが・・・
シートポジションを決め、シートベルトを締め、システムを立ち上げ、セレクターをDに入れて走り出す。発進はモーターでスッと出て、速度が上がるとエンジンがアシストする・・・という感覚は、プリウスから始まってセンチュリーに至るまで、いわゆるトヨタのハイブリッド車らしいものだ。
だが、すこし強めにアクセルペダルを踏むと印象は一変する。2.4Lの直4ターボ+モーターで前輪を、eアクスルと呼ばれるモーター/インバーター/ギアが一体となったトラクションモーターシステムで後輪を駆動する、2.4Lターボデュアルブーストハイブリッドシステムによる走りは、ちょっとしたスポーツセダン(死語か?)のようだ。
モーター+エンジンの駆動にターボがアシストされ、伸びやかに加速する。中間加速でアクセルを踏み増したときもターボラグをモーターが補うから、きわめてレスポンシヴ。しかも、その加速は力強く、速い。市街地走行などでもけっこうエンジンが元気よく働き、あまりハイブリッドを意識させない。
それゆえ、かつてのクラウンほど静粛性は高くない(それでも十分に静かなレベルに入ると思えるが)。よりクラウンらしいジェントルな走りを求めるならば、RSではなく2.5L+モーターのGやXを選んだほうが良いということだろうか。
安心感や懐の深さは、クラウンのクラウンたる所以
今回はワインディングロードでハンドリングを楽しむ機会はなかったが、サスペンションは状況において減衰力を制御し、電気式4WDのE-Fourがコーナリング時に前後の駆動力をコントロールしてくれる。これは、いずれあらためて試してみたいものだ。
乗り込んでいるうちに、ああ、やっぱりこれはクラウンだなと実感してきた。じつは試乗中にゲリラ豪雨に見舞われ、歩道の縁石が見えなくなりそうなほど車道が冠水した状態で走ることがあったのだが、もちろんエアコンをはじめ灯火類などは普通に機能し、安全&快適装備も問題なく粛々と走り続けてくれる。この安心感や懐の深さこそ、クラウンがクラウンたる所以なのだろう。
ひとつだけ苦言を呈するとすれば、エンジンを撮影しようとボンネットを開けたら、ダンパーではなくステーだったこと! クラウンなのに・・・!とビックリしたのだが、オーナーはボンネットなんか開けなくても大丈夫ですよ、ということなのだろうか。それでもオイルや冷却水、ウインドーウオッシャーといった最低限の点検はするべきなのだから、ボンネットにはダンパーくらい付けて欲しいところ。
安全&快適装備はトヨタのトップレベルのものが充実しているのだから、こんなところでコストを削減すると、ちょっとクラウンのイメージをスポイルしそうだな・・・と思わずにはいられなかった。逆に言えば、それ以外に欠点が見当たらなかったということかもしれないのだが。
今回の試乗では、300km近く走行して、平均燃費計の数値は13.7km/Lを表示した。市街地が4割、高速道路が6割くらいで、高速道路ではほとんどACCを使用した。ハイブリッドとはいえ、2.4Lターボエンジンと車両重量を考えれば、悪くない数値だろう。
クラウンクロスオーバーは、新世代のセダンとして順調な滑り出しを見せているようだ。オーナーの若返りにも成功しているようだし、このあとに続くスポーツ(SUV)、セダン、エステート(ワゴン)といったバリエーションの展開が、ますます楽しみになっていく。(写真:Webモーターマガジン編集部)
トヨタ クラウンクロスオーバー RS アドバンスド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4930×1840×1540mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター×2
●総排気量:2393cc
●最高出力:200kW(272ps)/6000rpm
●最大トルク:460Nm(46.9kgm)/2000−3000rpm
●モーター最高出力:前61kW(82.9ps)、後59kW(80.2ps)
●モーター最大トルク:前292Nm(29.8kgm)、後169Nm(17.2kgm)
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD(E-Four)
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●WLTCモード燃費:15.7km/L
●タイヤサイズ:225/45R21
●車両価格(税込):640万円