フェラーリもPHEVに活路を見出す
いち早く電動化への道のりを歩んでいたマラネッロ。ここ数年来の勢いを保ったまま23年もモデルラッシュとなった。
今やメインモデルとして人気を博すPHEVの296シリーズにはスパイダーモデルのGTSが加わり、またブランドへの入門モデル(現実には認定中古車がその通行手形になっているが)として重要な役割を担うFRのV8シリーズもまたスパイダーモデルの登場によってローマへと集約されることとなった。
今後はプロサングエの非12気筒化=電動化にも注目したいが、それはおそらく24年春にも登場する812後継モデルの生産開始を待ってということになるだろう。
マラネッロのモデルラッシュはカテゴリーをも増やした。1000psオーバーのPHEV、SF90シリーズをベースにXXという新たな高性能シリーズを捻り出したのだ。こちらもまた電動化に必要な技術をそのパフォーマンスアップに直結させ、そのうえサーキットイメージを合法的に公道へと降臨せしめた。
VIC(最重要顧客)の気分を味わえるシリーズというわけで、これもまた電動化によって莫大なパワーを手に入れ、それを徹頭徹尾制御するというテクノロジーを駆使することによって新たなビジネスチャンスを創造したと言っていい。
三羽烏のメインモデルがプラグインで揃う時代
スーパーカー三羽烏の最後、マクラーレンはどうだったか。マラネッロから迎えた新社長の元、メイン車種となったPHEVのアルトゥーラがようやく順調に生産されるようになった。
電動化への取り組みを実は創業時から始めていたブランドで、カーボンモノコックボディの採用は単なる軽量化のためではなく、今の時代を見越してのことである。ゆえにアルトゥーラはPHEVにもかかわらず車重1.4トンに収めてきた。軽さこそ、このブランドの正義である。
こちらもブランド創立60周年を迎えた年だったが、目立ったニュースはスーパーシリーズを750Sへと進化(マイナーチェンジ)させたこと、23年の瀬も押し迫ってからGTのテコ入れ高性能版というべきGTSが登場したことで、ニューモデルの登場という意味では比較的静かな年になった。
ランボルギーニがウラカン後継モデルをPHEVとすることは決まっている。三羽烏のメインモデルがプラグインで揃う時代がいよいよやってくるというわけだ。フル電動モデルが新興ブランドにしか見受けられないのは、これまた趣味領域であるがゆえの保守性に理由を求めることもできよう。
ポルシェもまたアニバーサリーに沸いた一年だった。ブランド設立75周年を迎えてカイエンやパナメーラといった収益モデルの新作発表が相次いだ結果、スポーツカー周辺は911のデビュー60周年、さらにはRSの50周年という記念行事に忙しかったようだ。
マイナーチェンジを24年春に控えた911に、ダカールやカレラT、そしてS/Tといった派生モデルが次々と登場し、シリーズの魅力をいっそう極めた。
60年にわたって連綿と基本コンセプトを変えずに進化したスポーツカーシリーズなど、世界を見渡しても他にない。次世代モデルの電動化がどのように行われるのか、その興味もまた尽きないが、広がったモデルレンジが911の未来を明るく照らしたことだけは間違いない。