最新のスポーツモデルもICE仕様で楽しめる幸運
英国の老舗ブランドによるスポーツモデルは次世代への移行がまだ始まっていない。現行モデル世代の大トリとして超破格の限定モデル、アストンマーティンのヴァラーやベントレー バトゥールを発表したかと思えば、ジャガーのようにエンジンモデルの最終版を宣言するブランドもあった。

創立110周年、そしてDBモデル誕生75周年というアストンマーティンにとって記念すべき2023年。その5月に日本で公開されたのが、DBシリーズ最新型のDB12クーペだ。オープンカーのDB12ヴォランテも発表された。
すでにフル電動への転換を決めているロータスも、最後のエンジンスポーツカーとなるエミーラを日本市場へと投入した。電動化そのものへの懐疑的な見解も深まるなか、五月雨式に次世代へと突入するであろう英国ブランドの行く末には大いに注目していきたい。
フランスのアルピーヌもまた、Rやその派生モデル、さらに過激な性能を与えた限定モデルなどで、エンジン付きA110シリーズの最終章を飾ろうとしている。
またイタリアのマセラティは、次世代への取り組みに意欲的だ。グラントゥーリズモをフルモデルチェンジし、フル電動と新開発エンジン(V6ネットゥーノ)という2本立てのパワートレーンを同じシャシに搭載。趣味領域ゆえICEかBEVかという二者択一が常識となりつつある今、マセラティのケースは珍しい。今後、ミッドシップスーパーカーのMC20もそのまま電動化するはずだ。
趣味領域はできるだけエンジンで引っ張ろう。そういう戦略がはっきりと見えているのがドイツ勢やアメリカ勢である。とくに実用領域のモデルをたくさん抱えているメルセデスやBMWはスポーツモデルの電動化には消極的に見える。他にやることがあるからだ。
結果的にメルセデスAMG SLやBMW M2、シボレーコルベットZ06といった、伝統的なエンジン付きスポーツカーを最新のテクノロジーとともに23年もまだ変わらず楽しむことができた。クルマ運転好きにとってはなんと嬉しい「時代遅れ」であったことか。(文:西川 淳)

ミドルクラスのスポーツカーにおいて、軽量ミッドシップエンジン専用モデルとして2017年に登場した新型A110。 2023年には、かつて初代のオリジナルA110が活躍した世界ラリー選手権にちなんだ多くの限定モデルをデビューさせた。