時代の流れも功を奏してランボのフラッグシップ登場
ある種の実用性を犠牲にする代わりに、運転する喜びをユーザー(=クルマ好き)へと提供する。それがスポーツカーというものだろう。それゆえ、運転する喜びの表現手法の違いがブランドの個性ということになる。
クルマに対して、これまでとは次元の異なった社会的要求の厳しさが増す中、スポーツカーをメインとするブランドの未来を見据えた戦略の舵取りが難しくなるのは当然だった。
スポーツカーとて合法的かつ社会的に一般道を走る乗用車であることに違いはなく、その目指すところは実用車と何ら変わらない。電動化や自動化、そして環境施作への適合といった大きな流れに背くわけにはいかないのだ。趣味のカテゴリーであるからこそ、実はなおさら「言い訳無用」でもある。
一方で、そもそも付加価値が売りのカテゴリーゆえ、万人におもねる必要はなく、大きな目で見ればプロダクトアウトであればいい(小さく実際の購入層に関して見ればマーケットインでもあるが)。
その結果、大胆な転換もまた可能であるというわけで、ブランドの現在地によって実にさまざまな未来戦略が実際の商品として立ち現れた年が2023年だった。
電動化に関してのスケジュールがもっとも遅かったイタリアの雄ランボルギーニにとって、コロナ禍は比較的「悪くない」タイミングで起きており、明けてちょうど創立60周年を迎えた今となって次世代戦略の要となるフラッグシップモデルが現れる、という暁光に恵まれている。レヴエルトだ。
大ヒット作アヴェンタドールの後を受け、デザイン、エンジンからボディ骨格、シャシまで、エンブレム以外のすべてを再び刷新した。宣言されてきたとおり大きめのバッテリーを積んだPHEVとなったスーパースターは、今後すべての闘牛をプラグイン化するブランドの狼煙(のろし)でもある。
バッテリーの重量増を全体として抑えるべく高剛性化と軽量化にも取り組んだ結果、その動力性能のレベルもまた新たな次元へと到達した。スポーツカーブランドというものは社会的要求に応えることを性能レベルの停滞の言い訳にできない。むしろ性能アップのきっかけにしなければならない。ランボルギーニの戦略はそのことを如実に物語っている。
もちろんコロナ禍によって多少のスケジュール遅延はあったことだろう。代わりにウラカンテクニカや同ステラートといった歴史に残るモデルの登場も見たし、一方でフル電動のランザドールのような「未来」を少し早めに目撃することもできた。