「軽さが武器」なのは今も昔も変わらない
このロードスターRFとA110の重量は、実のところほぼ変わらない。基準車で1110kg、もっともホットなA110Rが少し軽い1090kgとなる。
元ネタとなったA110は晩年となる70年代前半、エンジンは1.6Lに拡大、車重は700kgまで膨らんだが、それでも当時の同排気量車となるロータスヨーロッパスペシャルよりもより軽く、それを運動性能上の武器としていた。
現在のA110はエンジンを横置きのミッドシップとし、骨格のすべてと外板のほとんどをアルミとすることでこの車重を実現している。
車台は鋳造部品や押出材を主骨格に、アルミ材をリベットやボンドで接合するものだ。構造としてはアストンマーティンのVHプラットフォームにも近く、市販車としてのエンジニアリング採用は遡れば初代ロータスエリーゼに辿り着く。
スポーツカーが軒並み500ps超を謳い肥大化してきた21世紀において、軽量・高剛性を小ロットでも実現させる術を浸透させたエリーゼの功績は大きい。
取材車はA110Rをベースに、カーボン加工を得意とする仏デュケーヌ社と共同開発したカーボンホイールを、オプション中でもっとも軽量なアルミホイール「GTレース」に置き換えたA110Rチュリニだ。その名は言わずもがな、モンテカルロラリーを象徴する峠から頂いている。
A110Rチュリニの重量は1100kg。件のカーボンホイールはA110S比で12.5kgのバネ下重量軽減に貢献しているというが、履いているタイヤも同じミシュランパイロットスポーツカップ2ということで、重量増はほぼホイールの差とみていいだろう。
A110Rチュリニがアルミホイールを選んだ理由は、単にコストダウンというわけではなく、よりガチに走り込みたいという向きにとってはカーボンホイールの重量ではなく存在感が重いからなのだと思う。
サーキット走行を好む人にとってはカーボンセラミックブレーキのランニングコストが合わないのと似たような話で、高価なカーボンホイールは頻繁にタイヤチェンジャーを噛ませるのも気が引ける。破断なんて話になれば1本あたりの額は考えるだけで恐ろしい。
それでもA110Rの重量や空力、サスセットに憧れるという向きにとっては、ガンガン使えるアルミホイールの方がむしろお誂えなのだろう。チュリニという公道寄せな名前はそんな気軽さも表しているのかとみてとれる。