時代が変わっても、変わらない価値がある。現代における「スポーツカー」は、もはや「速い・低い・2ドア」だけでは語れない。求められるのは、走る歓びと日常性の両立、そして時代との調和。大切なのは、スペック以上にドライバーの感情を揺さぶるかどうか。いま一度、スポーツカーの本質に向き合いたい。ここで扱うスポーツモデルはターボエンジンと4WDシステムを搭載するという共通点もある。だが、エンジンと駆動システムへのこだわりと目指した走りの方向性が実は大きく異なる。今回はフォルクスワーゲン ゴルフRとスバル WRX S4、トヨタ GRカローラの3台によるロングドライブをとおして、その違いと魅力をあぶり出していく。(MotorMagazine2025年9月号より。文:大谷達也/写真:永元秀和)

その走りはドライバー次第で紳士的にも獰猛にも化ける

最後のゴルフRは、WRX S4とGRカローラの中間というか、両方の世界観を兼ね備えたようなスポーツモデルである。

エンジンは静かで滑らか。乗り心地だって、ワインディングロードを走る速度域だったら決して悪くない。おかげでタイヤが生み出すグリップ力は安定していてスタビリティは良好。軽く流す範囲でいえばWRX S4に迫る安心感と快適性が得られるはずだ。

画像: フォルクスワーゲン ゴルフR アドバンス:あらゆる走行シーンで快適性と走行性能を高い次元で融合させていたゴルフR。まさに万能選手という言葉がマッチする。

フォルクスワーゲン ゴルフR アドバンス:あらゆる走行シーンで快適性と走行性能を高い次元で融合させていたゴルフR。まさに万能選手という言葉がマッチする。

ただし、積極的に走るとゴルフRはまた違った側面を見せる。

とにかくエンジンパワーが強烈で、アクセルペダルを強く踏み込めば、どんな速度域でも目の覚めるようなダッシュ力を発揮してくれるのだ。しかも7速DCTのシフトスピードは素早く、ダイレクト感も文句なし。おかげでフィルムを早回しにした映画のように周囲の景色が速く流れ始め、スリリングなドライビングを楽しめる。

しかも、コーナリング中に右足に込める力を意識的に増やすと、後輪から回り込んでいくような感覚を味わえる。これこそ、前述したトルクベクタリングの効果で、基本的なハンドリング特性としては安定志向が強い4WDモデルでありながら、まるで後輪駆動モデルのように軽快な挙動を引き出せるのだ。

この結果、コーナリングの曲率や車速などがピタリとはまると、コーナー出口ではハンドルを少し戻したくなることがあるほど。これほど自由自在に操れる4WDは、スーパーAYC(外輪のトルクを増やすという意味ではゴルフRのトルクベクタリングに近い発想のメカニズム)を積んだ三菱 ランサー エボリューション以来のように思えた。

画像: フルタイム4WDシステム「4MOTION」、左右後輪のトルク配分を制御する「Rパフォーマンストルクベクタリング」、電子制御式ディファレンシャルロック「XDS」などを組み合わせることでトラクション&ハンドリング性能を高めた。

フルタイム4WDシステム「4MOTION」、左右後輪のトルク配分を制御する「Rパフォーマンストルクベクタリング」、電子制御式ディファレンシャルロック「XDS」などを組み合わせることでトラクション&ハンドリング性能を高めた。

ただし、そんなゴルフRにも弱点はある。高速道路を走っていると路面からときおり強いショックが伝わってくるのだ。感覚的にはタイヤのトレッドが硬いことが原因のように思われたが、車速が高い領域でのみ感じられるのが不可解だった。また、そうした速度域ではタイヤの気柱共鳴音(路面からの振動によりタイヤ内部に共鳴が起きる現象)が認められた。いずれも、快適性を重視する向きにはなんらかの対策を講じたくなるところだろう。

したがって快適性や洗練さを優先される人にはWRX S4、多少快適性を犠牲にしてもダイレクト感が欲しいならGRカローラ、その両方を手に入れたい欲張りな人にはゴルフRがお勧めかもしれない。もっとも、そのぶんゴルフRは値が張って、WRX S4の500万円台半ば、GRカローラの約600万円に対し、およそ750万円のプライスタグがつけられている。悩ましいところだ。

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