正攻法のSUVアプローチはアメリカンブランドならでは
マイバッハGLSやベンテイガと比べると価格は、ずっとアフォーダブルながら車格は肩を並べるアメリカの雄、キャデラックのエスカレードも新しくなった。
ラダーフレームを踏襲しつつも、リジッドアクスルだったリアサスペンションはマルチリンク式とされ、ついに四輪独立懸架となった。車体を高張力系の鋼板やアルミ合金を多用した軽量設計としたことも効いて、従来比で全長が205mm、全高が20mm、ホイールベースが80mmも拡大しているわりにはむしろ車両重量を増の2740kgによくぞとどめたといえそうだ。
今や貴重とも言える新型の6.2L V8自然吸気エンジンは416psを発生し、これにプラス2速の10速ATが組み合わされる。欧州車とは異質の、アメリカンSUVの最高峰らしい雰囲気を感じさせる広大な室内には、湾曲型OLEDディスプレイなど先進的な装備も与えられている。
さらに、導入からほどなくボディカラーの変更や、マトリックスLEDを用いたアダプティブフォワードライティングヘッドランプの採用、イオナイザーから高性能エアフィルターへの空調システムの変更など、早くも改良が実施された。
参考まで、日本導入車よりさらに約40cmも長い「ESV」が本国ではラインナップされている。さすがはアメリカである。日本でも並行輸入車をたまに見かける。
また、日本における販売が絶好調なジープの中でも、もっとも道路事情にマッチして人気のコンパスがビッグマイナーチェンジを実施した。外観も小変更により車格がやや高まった印象を受けるが、最大のポイントは欧州プレミアム勢にも負けないほどのインテリアの大幅な質感向上にある。さらに、インフォテインメント系やADAS類の刷新や、快適性を高めるためのアイテムの追加など装備類も大きく進化した。
多様なアプローチが目を惹く個性際立つブランド群の魅力
フランス勢もいろいろと動きがあった。最大のニュースは、ルノー キャプチャーのフルモデルチェンジだ。欧州でSUVの販売台数ナンバーワンの座にあるモデルというだけあって、完成度もかなりのもの。キープコンセプトながら中身は一新されていて、リフレッシュされた外観も新鮮味があるだけでなく、走りもかなりの力作。予想以上に動力性能を重視した4気筒エンジンは、このクラスではむしろ少数派と言えよう。
一方、これまであまり電動イメージのなかったPSAが、プジョー208でいきなりレベルの高いBEVを送り出したかと思えば、矢継ぎ早にPHEVを追加したことには驚かされた。プジョー3008ハイブリッド4とDS7クロスバックE-TENSEである。
しかも、リアモーターで後輪を駆動する手法を取ったことにも衝撃を受けた。完成度もなかなかのもので、強力な動力性能と長いEV走行航続距離に加えて、リア駆動を生かしたハンドリングの仕上がりにも感心させられた。
シトロエンC3エアクロスSUVも新しくなった。PSAではBセグ車について、プジョー208とDS3については新しい「CMP」と呼ぶプラットフォームを採用したが、C3系は旧来のものを用いている。これまでも何度か改良が施されていて、今回もはっきりとは伝えられていないものの、足まわりも手当てされたようで、走りが洗練された印象を受けた。
ボルボは、XCのマイナーチェンジを実施し、内外装をリフレッシュした。ただし、もともとデザインの評判が良いだけに、あまり大きな変更は加えていない。
むしろ注目したいのは、新しいインフォテインメントシステムの採用だ。従来の独自の「センサス」から、グーグル社が開発したシステムを採用したことで、カーナビは「Google map」となり、さらに音声操作システム「アシスタンス」も利用できるようになった。
強みである安全機能も強化されており、センシング機能を最新世代にアップデート。先行車発進告知機能とリア衝突回避・被害軽減ブレーキシステムを追加するなどした。これら新しいインフォテイメントシステムやADASは、V90シリーズにも採用されている。
輸入SUVに期待されるのは、そのブランドなればこそ持ちうる独自性や付加価値だと思うが、それにいかに応えるか。各社が腕にヨリをかけてしのぎをけずる多種多様な力作が、とりわけこのカテゴリーには豊富に揃っている。(文:岡本幸一郎)