スポーツカーにとって、速さを備えていることは確かに魅力のひとつだ。だが本質はそこではない。身体とクルマがひとつになったように走ることの喜び。あえて3ペダルMTの2台でその嬉しさを感じる。(MotorMagazine2024年6月号より再構成)

MTを操る楽しさが備わり、別物のように気持ちが良い

現行モデルのスープラは歴史的に持っていたGT性をやや薄め、80スープラの強靭な部分のみを抽出して発展させたようなモデルだと思う。

画像: ボディ剛性も徹底的に強化されており、トヨタ86に対してねじり剛性で約2.5倍、レクサスLFAをも上回ると公言されていた。

ボディ剛性も徹底的に強化されており、トヨタ86に対してねじり剛性で約2.5倍、レクサスLFAをも上回ると公言されていた。

画像: 「iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)」機能で、変速時にはエンジン回転数が自動的に調整される。

「iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)」機能で、変速時にはエンジン回転数が自動的に調整される。

筋骨隆々に見えるスタイルはボディの強さの表れだろうし、そもそも2シーター化されて車体サイズだってかなり小さくなった。個人的にはスープラという名前との歴史的な整合性に欠けると思うが、86よりも良くできたピュアスポーツカーである。

それゆえ、マニュアルトランスミッションとの相性はすこぶるつきに良い。どうして最初から出さなかったの?と思ったくらいで、もちろんそこには速さ重視の高性能を御するため、というもっともらしい理由もあったのだろう。

けれども高回転域まで心地良く回るエンジンと、ドライバーとの一体感のあるボディ骨格とパッケージを持つスープラには、前述したマニュアルで操る両方の楽しみが備わっている。

自分の試乗は、あいにく雨の中となった。とはいえ、以前にもMT仕様のスープラには乗っているし、長距離ドライブも経験済み。MTの本格的なスポーツカーというとスパルタンな乗り味を想像する人も多いというが、実用域におけるスープラは従順だ。

クラッチ操作にシビアな点はなく、柔軟なエンジン性能のおかげで多少ズボラな操作をしても街中では問題なく走る。クラッチを踏んで止まることさえ忘れなければ!

トルコンATを介して味わうB58型エンジンとは、もはやまるで別物のように気持ちが良かった。

このストレート6、実用域ではあたかも大排気量エンジンのようなフィールで、マニュアルトランスミッションとの相性が抜群にいい。せっかく「手漕ぎ」で乗るのだ。各ギアのキャラクターとエンジン回転との組み合わせをじっくり味わいたい。

たとえば3速で徐々に加速する感覚や、5速でエンジンとダイレクトに繋がるフィールはというと、実をいえばS58型エンジンを積むM2以上に心地良かったりする。マニュアル運転好きには至福の時間を過ごすことができよう。

そのうえスープラの動きは少しヤンチャだ。滑りやすくデコボコした路面では実にスリリングで、常にドライバーの両手に仕事を要求する。もちろん尻のセンサーもずっと敏感モードにセットしなければならず、そういう意味では心地よく汗をかきたい向きにはちょうど良いスポーツカーである。

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